雨と君と (二階堂幸)
「雨と君と」は、心温まるストーリーと美しい日本の情景描写が魅力的な漫画です。主人公とその愛犬の出会いから始まる物語は、読む人の心を優しく包み込みます。
作者の繊細なタッチで描かれる日本の景色は、なつかしさと美しさに溢れ、まるで実際にその場所に立っているかのような感覚を与えてくれます。
そして何より、主人公と愛犬の絆の深さが印象的です。ふとした瞬間に見せる愛犬の表情やしぐさは、飼い主なら誰もが経験したことのある、愛おしくてたまらない瞬間ばかり。
「あともうちょっと」の場面では、愛犬の可愛らしさと飼い主の優しさが相まって、思わずほっこりとしてしまいます。
日常のひとコマひとコマが丁寧に描かれた本作は、犬を愛する全ての人に読んでいただきたい一冊です。
1日外出録ハンチョウ (福本伸行,萩原天晴,上原求,新井和也)
「1日外出録ハンチョウ」は、「カイジ」シリーズのスピンオフ作品で、帝愛グループの地下労働施設で働く債務者たちの日常を描いた漫画です。主人公の大槻は、「1日外出券」を使って地上に出ると、限られた時間を存分に楽しもうと、美味しい食事を堪能したり、仲間と交流したりします。原作とは異なり、殺伐とした雰囲気はなく、グルメ漫画のようにお店の料理が丁寧に描かれていたり、監視役の黒服の誕生日パーティーを開いたりと、ギャンブルとは無縁のほのぼのとしたエピソードが魅力です。原作の大槻が非情な印象だったのに対し、この作品の大槻は憎めないおちゃめなキャラクターとして描かれています。debt地獄の中で、仲間と助け合いながら、限られた自由を全力で謳歌する姿は、読んでいてほっこりする気持ちになれるでしょう。
行け!稲中卓球部 (古谷実)
古谷実の代表作「行け!稲中卓球部」は、青年誌で連載されたコメディ漫画の傑作です。
独特のタッチで描かれたキャラクターたちが繰り広げるギャグの数々は、思わず吹き出してしまうこと間違いなし。
主人公の竹田を中心に、変態、オタク、ワキガ、ムッツリなど個性的なメンバーが集まった稲豊中学卓球部の日常は、笑いの絶えない青春グラフィティになっています。
絵柄のクセが強いので女性向けではなく、下ネタも多いので子供向けでもありませんが、何度読んでも面白さは変わりません。
部活動を通して繰り広げられる彼らのキミョーでダメダメな姿に、思わず愛着がわいてくるはずです。
学生時代の懐かしさと、今読んでも色あせない面白さを兼ね備えた作品なので、ぜひ一度手に取ってみてください。
きっとあなたの心に残る、忘れられない1冊になるでしょう。
新宿スワン (和久井健)
「新宿スワン」は、2000年代初頭の歌舞伎町を舞台に、スカウトマンの成長と裏社会を描いた漫画です。主人公の白鳥龍彦が「バースト」というスカウト会社に入社したところから物語が始まります。
作者自身も元スカウト会社に所属していたそうで、リアリティーあふれる世界観が魅力的です。今とは全く違う、ギラギラとしていた時代の歌舞伎町を感じることができます。
主人公は19歳の見習いスカウトマンで、街角でギャルに声をかけ、水商売の仕事を斡旋し、紹介料で生計を立てています。そんな彼が飛び込んだ歌舞伎町の裏社会は、カネがすべてを決める弱肉強食の世界でした。
物語は、渋谷進出、闇金融との抗争、横浜進出、ホスト転身など、様々な展開を見せます。絵柄は初めのうちは荒々しい印象ですが、だんだんと洗練されていくので、最初は抵抗があっても読み進めることをおすすめします。
歌舞伎町のディープな世界に興味がある方、スカウトマンの生き様に惹かれる方、ギラギラとした時代の空気感を味わいたい方には特におすすめの1巻です。ぜひ手に取ってみてください。
なんでここに先生が!? (蘇募ロウ)
「なんでここに先生が!?」は、美人教師と普通の高校生の間で巻き起こるエッチなハプニングを描いた、ギリギリ感満載の漫画です。ヒロインは一人、年上の先生のみという潔さが素晴らしく、先生のギャップも可愛く描かれていて、とても楽しめます。毎回のおきまりの導入からシチュエーションを理解しやすく、思った以上にエロ描写もしっかりしていて満足できます。ラブコメとしてもにやにやできる点が多く、おすすめです。特に、柔らかさの限界に挑んだ衝撃作で、ヤングマガジン掲載作品に加えて、ヤンマガにすら載せられない、限界に挑んだ描き下ろしが丸ごと1話分収録されています。そのギリギリ感を見届けてほしいです。ツイッターで大人気の漫画家・蘇募ロウが描く美人教師との「やわやわ」で「あまあま」な日々をご堪能ください!
頭文字D (しげの秀一)
「頭文字D」は、峠の走り屋漫画の金字塔とも言える作品です。主人公の藤原拓海が、型遅れのAE-86で最新のスポーツカーに挑む姿は、読者の心を熱くさせました。ドリフトを極めた走りは、スピードへの憧れを掻き立てるものでした。
作品の人気は社会現象にまで発展し、登場車種の価格が高騰するという珍事も起こりました。それほどまでに「頭文字D」は影響力を持っていたのです。
群馬の山道を舞台に、若者たちが車と真剣に向き合う姿は、多くの読者の共感を呼びました。自分の車と技術を信じ、仲間と切磋琢磨しながら成長していく姿は、今なお多くのファンを魅了し続けています。
車好きはもちろん、青春ストーリーが好きな方にもおすすめできる作品です。ぜひ一度読んでみてください。きっとあなたも「頭文字D」の世界にハマることでしょう。
パパと踊ろう (地下沢中也)
「パパと踊ろう」は、ヤングマガジンに連載されていた天知家を舞台にした笑える漫画です。父のしげる、息子のよしはる、娘のふきこ、そしてご近所さんが登場し、彼らが巻き起こすユーモラスな日常が描かれています。この作品の魅力は、非常にセンスのあるギャグとユーモアにあります。下品すぎず、大人向けのバランス感覚が絶妙で、お笑い系漫画の中でもトップクラスの面白さを誇ります。作者の他の作品、例えば「銀座小学校」なども同様に面白く、読む価値が十分にあります。ホームコメディを基調としながらも、エロ・グロ・ナンセンスの要素を絡めつつ独自のギャグ世界を作り上げているこの作品は、笑いを求める全ての人におすすめできる一冊です。
僕たちがやりました (金城宗幸,荒木光)
漫画「僕たちがやりました」は、愛すべきバカな高校生たちが巻き起こす予想外の惨事と、その後の人生の変化を描いた衝撃作です。
一見、ただのバカ騒ぎとエロが大好きな高校生たちですが、彼らの行動が引き起こした出来事は、誰にでも起こりうる現実的な問題を投げかけています。読者は、登場人物たちの葛藤に自分を重ねながら、罪と罰、償いについて考えさせられるでしょう。
しかし、この作品は決して小難しいものではありません。テンポの良い展開と、微妙な表情を巧みに描写する絶妙な画力で、読者を物語に引き込みます。特に、パイセンの人間像は見事に描かれており、印象的なキャラクターとなっています。
事件前の無邪気な高校生たちの様子と、事件後の彼らの変化を対比させることで、物語はより切なさを増していきます。
「僕たちがやりました」は、笑いあり、涙あり、考えさせられる要素ありの、まさに現代の若者たちの姿を映し出した傑作です。ぜひ一度手に取ってみてください。きっとあなたの心に残る作品となるはずです。
GTO パラダイス・ロスト (藤沢とおる)
「GTO パラダイス・ロスト」は、料理の腕前で難題を解決していく痛快な物語だ。主人公の鬼塚英吉は、ベトナムの日本大使館で料理人として働きながら、外交上の問題を次々と解決していく。彼の料理への情熱は半端ではなく、家族サービスをほったらかしにしてでも料理に没頭する。そんな彼の周りには、美女が次々と現れ、ドロドロの様相を呈しそうになるが、何とか回避していく。モテる男の辛さを感じさせつつも、料理の力で難題を解決していく姿は痛快だ。家庭崩壊の危機を乗り越え、料理と外交の両立を目指す鬼塚の奮闘ぶりは、読者を魅了すること間違いなしだ。
3×3EYES (高田裕三)
漫画「3×3EYES」は、一見するとありふれたネタの集まりに感じるかもしれません。しかし、この作品の真の魅力は1巻目を読んでみればわかるでしょう。少しエッチで、少しグロテスクで、ニヤニヤできる要素もありながら、何よりもハラハラドキドキの展開が待っています。高校生の藤井八雲とチベットから来た少女パイの出会いから始まる、不老不死の力を巡る伝奇ミステリーアクション。人間になりたいと願う2人の旅路は、あなたを魅了すること間違いなし。昔の作品ならではの、心震える展開の数々を、ぜひ体験してみてください。
彼岸島 (松本光司)
「彼岸島」は、吸血鬼が棲む孤島を舞台にした戦慄のサバイバルホラー漫画です。主人公の宮本明は、行方不明の兄を探すために彼岸島へと足を踏み入れますが、そこには恐るべき吸血鬼の脅威が待ち受けていました。
明は物語が進むにつれて、現代っ子から頼もしいキャラクターへと成長していきます。作品全体としては残酷でグロテスクな描写が多いですが、所々にギャグ要素も散りばめられています。
特に、邪鬼のデザインセンスは独特で印象的です。ホラー好きにはたまらない作品ですが、グロテスクな表現が苦手な人には向かないかもしれません。
「彼岸島」は読む人を選ぶ漫画ですが、ホラーやサバイバル要素が好きな人には是非おすすめしたい作品です。一度読み始めたら、息をするのも忘れるほどの緊張感と恐怖に襲われること間違いなしです!
BE-BOP-HIGHSCHOOL (きうちかずひろ)
「BE-BOP-HIGHSCHOOL」は、80年代を代表する不良漫画の金字塔です。ヒロシとトオルのコンビが繰り広げる、リアリティあふれる喧嘩シーンと魅力的なキャラクターが、今なお多くの読者を引き付けています。連載300回を達成し、不滅のツッパリ白書として23巻まで刊行されたこの作品は、数多くの不良漫画に影響を与えました。初期の20巻までは喧嘩シーンが中心でしたが、後半はギャグ路線に変化したのが惜しまれるところです。それでも、「BE-BOP-HIGHSCHOOL」は80年代の不良漫画を語る上で欠かせない作品であり、今もなお読み継がれる名作として高く評価されています。
喧嘩稼業 (木多康昭)
「喧嘩稼業」は、主人公・佐藤十兵衛の格闘技や喧嘩にまつわるストーリーを軸にした格闘漫画です。十兵衛がトーナメント出場権を奪うべく、ボクサー石橋強と対決するシーンで、石橋のボクシング最強論が面白いと感じました。石橋の理論は、競技者としての感覚から出たものではなく、世渡り下手で不遇ゆえに屈折した彼らしい論理で、筋は通っているものの独特な視点が魅力的です。また、本作は時事ネタやブラックジョークを盛り込んだギャグ要素もあり、シリアスな場面とのバランスが絶妙です。作画にはCGが取り入れられ、単行本では加筆も多いため、読み応えがあります。格闘技の実力比べだけでなく、優位に立つための策略も描かれるのが特徴で、格闘漫画ファンにはもちろん、ストーリー性を重視する方にもおすすめできる作品だと思います。
セブン☆スター (柳内大樹)
「セブン☆スター」は、ヤンキー漫画の中でも一風変わった設定が魅力的な作品です。主人公を始めとする登場人物たちは、既に成人しているという点が新鮮で、より深みのあるストーリー展開が期待できます。
キャラクターデザインがかっこよく、ジャケ買いしたくなるほどの魅力があります。しかも、中身も面白いので、一度手に取ったら止まらなくなること間違いなしです。
築地を舞台に、カジノ建設に立ち向かう主人公と、かつての伝説のチーム「セブン☆スター」の再集結という、ワクワクするようなストーリーが展開されます。主人公の世界一のベーシストを目指すという設定も、ヤンキー漫画にありがちな学生の喧嘩とは一線を画しています。
また、登場人物の名前が有名俳優の名前になっているというのも、作品の個性を際立たせる要素の一つです。これは、読者にとって親しみやすく、キャラクターを覚えやすくする効果があります。
「セブン☆スター」は、ヤンキー漫画の新しい可能性を感じさせる作品であり、従来の枠にとらわれない斬新な設定と魅力的なキャラクターが、多くの読者を惹きつけること間違いなしです。ぜひ、この伝説の七人の活躍を見届けてください!
×××HOLiC (CLAMP)
漫画「×××HOLiC」は、妖を見ることができる少年・四月一日君尋が、不思議な店主・侑子さんと出会い、願いを叶える対価としてアルバイトをすることになるストーリーです。この店は必要な人にしか入ることができず、訪れた人々の願いを叶えていきますが、その顛末は毒を含んでいて、時には救いのない結果も待っています。
原作では、アニメ版よりも重いテーマが扱われており、人間の内面を深く掘り下げています。妖艶でミステリアスな雰囲気と、独特の不気味さが魅力的で、ハマる人にはたまらない世界観が広がっています。
霊感体質の少年が、不思議な店で働くことになり、客の願いを叶えていく中で、人間の闇や欲望に直面していく様子が描かれています。「あやかし」が視えてしまう設定も面白く、ファンタジーとリアリティが絶妙に融合した作品です。
「×××HOLiC」は、単なる不思議コメディではなく、人間の心理や社会問題にも切り込んだ深い内容になっています。美しくも妖しい絵柄と、クレバーな台詞回しも魅力的で、読み応えのある作品です。ファンタジー好きや、人間ドラマが好きな人におすすめしたい漫画です。
ドラゴンヘッド (望月峯太郎)
「ドラゴンヘッド」は、恐怖と生きる意志をテーマに、主人公・青木照(テル)の心の葛藤と成長を丁寧に描いた作品です。修学旅行の帰途、トンネル内で脱線事故に遭遇したテルたち3人の生存者は、絶望的な状況の中で生き延びる術を模索します。富士山の大噴火による大災害で荒廃した世界を背景に、極限状態に追い込まれた少年たちの苦悩と、それに伴う狂気と暴力が描かれます。作者は、初期のトンネルでのリアリティから、脱出後の非現実的な要素へと物語を展開させることで、恐怖と生きる意志というテーマを浮き彫りにしています。主人公テルが自分の恐怖と対峙し、生きる意志を発見していく様子は、まるで楳図かずおの14歳版エヴァンゲリオンの碇シンジを思わせます。人間の本質と「究極の恐怖」に迫るこの作品は、サバイバル要素を超えた深いテーマ性を持っており、非常に興味深い読み応えのある作品です。
賭博黙示録 カイジ (福本 伸行)
「賭博黙示録 カイジ」は、社会の厳しさと人間の本質を鋭く描いた作品です。主人公の伊藤開司(カイジ)は、借金を押し付けられ、命がけのギャンブルに巻き込まれていきます。そこで繰り広げられる勝負は、まるで読者自身が当事者であるかのような臨場感があり、社会に出た後に味わうであろう数多くの「教訓」が織り込まれています。この作品は、賭博に身を堕とした男たちを安全な場所から眺めることを許さず、社会の本当の姿を暴きながらも、主人公のカイジの勝負に徹する姿勢に品の良さすら感じさせます。社会に出る前に読んでおきたかった作品であり、人生を歩む上で大いに参考になる、魅力的な物語です。
ザ・ファブル (南勝久)
「ザ・ファブル」は、プロの殺し屋である主人公が1年間殺しをせずに一般人として生活するという設定の中で、彼を取り巻く個性的なキャラクターたちとの交流を描いた作品です。一見すると殺し屋やヤクザの世界を舞台にしていますが、その本質は人情噺であり、人間性や生き方を問う物語となっています。作者の南勝久氏は、今まで誰もやったことのない世界観を下敷きにしながらも、現代社会に通じる普遍的なテーマを巧みに織り交ぜ、「殺し屋版寅さん」とも言える作品を生み出しました。読者は、主人公の成長と変化を通して、命の尊さや人との絆の大切さを感じ取ることができるでしょう。独自の設定とキャラクター、そして笑いと涙が絶妙に混ざり合ったストーリーは、多くの人を魅了すること間違いなしです。
柔道部物語 (小林まこと)
「柔道部物語」は、講道館柔道がJUDOへと変貌していく時代の日本柔道の葛藤を描いた漫画です。当時の国際柔道では、裏投げやすくい投げなどのパワー柔道が主流となっており、これを西洋柔道として表現しているのが西野新二というキャラクターです。一方、主人公の三五十五は、古賀稔彦の柔道を体現していると思われます。
作者の小林まこと氏は柔道を深く研究しており、「柔道部物語」を読み返すとソウルオリンピックを思い出します。東京オリンピックでも、あの熱気を再び味わいたいと強く願っています。
この漫画は、高校生の三五十五が柔道部に入部し、厳しい先輩たちのシゴキや練習に耐えながら、必殺の背負い投げを会得して岬商の救世主となる物語です。読み始めたら止まらない、珠玉の本格柔道コメディとして知られています。柔道の奥深さや、青春の熱い思いが描かれた作品であり、柔道ファンはもちろん、スポーツや青春漫画が好きな方にもおすすめの一冊です。
エリートヤンキー三郎 (阿部秀司)
「エリートヤンキー三郎」は、最凶の高校を舞台に、主人公の大河内三郎が巻き起こす騒動を描いたギャグ漫画です。三郎は、伝説の不良である大河内兄弟の末っ子として入学しますが、実は内気で普通の高校生。しかし、周囲の誤解や運の無さから、思いとは裏腹に番長に祭り上げられ、三郎軍団なる組織まで結成されてしまいます。
三郎の苦悩や葛藤、そして秘められた真の力が、読者を引き込む面白さです。ギャグ要素が強いながらも、登場人物の心理描写が秀逸で、クセになる魅力があります。また、設定の変化や脱線も、作品の面白さを損なわず、むしろ変人ギャグ漫画としての魅力を高めています。
最凶の高校を舞台に、普通の高校生が番長として奮闘する姿は、読者を爆笑させつつも、共感を呼ぶでしょう。ギャグとシリアスのバランスが絶妙な「エリートヤンキー三郎」は、きっとあなたを虜にすること間違いなしです!
7人のシェイクスピア NON SANZ DROICT (ハロルド作石)
「7人のシェイクスピア NON SANZ DROICT」は、16世紀のロンドンを舞台に、シェイクスピアの作品が実は7人の男女の合作だったという斬新な設定で描かれた作品です。当時のイギリスの貧しさや文化的な遅れが丁寧に描写されており、リアリティがあって読み応えがあります。主人公のランスを中心に、個性豊かな仲間たちが才能を結集し、絶対的格差の中で自由を求めて革命的な脚本を生み出していく姿は、読む者を熱くさせずにはいられません。ただ、7人もの天才が集まるという設定には若干の違和感を覚えます。とはいえ、その点を差し引いても、この作品は傑作に近いと言えるでしょう。歴史や文化、そして人間ドラマに興味がある方には是非おすすめしたい一冊です。
アルキメデスの大戦 (三田紀房)
「アルキメデスの大戦」は、日本海軍の内部で繰り広げられる巨大戦艦建造をめぐる熾烈な戦いを描いた漫画です。主人公は、山本五十六海軍少将に選ばれた元帝大生の数学者・櫂直。彼は、平山忠道造船中将が推し進める無駄に大きい巨大戦艦「大和」の建造計画を阻止するために、特別会計監査課の課長として奮闘します。
この漫画の魅力は、史実をベースにしながらも、フィクションとして巧みに物語を展開している点にあります。時代背景や海軍内部の雰囲気が見事に再現されており、読者を当時の世界へと引き込みます。また、数学者である主人公が、理論と論理で巨大戦艦建造の矛盾を暴いていく過程は、知的好奇心をくすぐられる面白さがあります。
私自身、つい夢中になって15巻まで購入してしまったほど、この漫画の虜になりました。歴史好きな方はもちろん、スリリングな展開を楽しみたい方にもおすすめです。ぜひ、まずは無料の部分を読んでみてください。きっと、あなたも「アルキメデスの大戦」の世界に引き込まれることでしょう。
湾岸MIDNIGHT (楠みちはる)
湾岸ミッドナイトは、車やチューニングに興味がなくても、人生の選択や生き方について考えさせられる作品です。主人公たちは、常に自分の信念に基づいて行動し、たとえそれが世間一般の価値観と異なっていても、自分の選択に誇りを持っています。彼らは、自分の人生を自分の手で切り開いていく勇気と覚悟を持っているのです。そして、その選択には代償が伴うことも理解しています。湾岸ミッドナイトは、自分の人生を自分の意志で生きることの大切さを教えてくれる作品なのです。
ハンツー×トラッシュ (こばやしひよこ)
ハンツー×トラッシュは、一見エロ要素が強めのスポーツ漫画ですが、実は正統派のスポコン作品です。主人公の浜路洋平は、上級生の中島から「女子部員を触り放題・揉み放題」という甘い言葉に誘われ、不純な動機で水球部に入部します。しかし、水球という過酷な競技に直面し、徐々に真剣に取り組むようになっていきます。
作品の魅力は、エロとスポーツのバランスの取り方にあります。時にはエロ要素が前面に出ることもありますが、それは物語の息抜きとして機能しています。一方で、水球の試合シーンは迫力満点で、読者を引き込む力があります。
キャラクターも魅力的で、個性豊かな女子部員たちが次々と登場し、物語に彩りを添えています。彼女たちとの交流を通して、主人公は成長していきます。
ハンツー×トラッシュは、エロ要素に惹かれて読み始めても、いつしか水球への情熱に感化される、そんなスポコン作品です。スポーツとエロのバランスが絶妙な、新感覚の漫画を楽しみたい方におすすめの一作です。
マイホームヒーロー (山川直輝,朝基まさし)
「マイホームヒーロー」は、平凡なサラリーマンの鳥栖哲雄が、娘を守るために衝動的に殺人を犯してしまい、妻と共に必死に隠蔽工作を進めるストーリーです。推理小説オタクの哲雄の高速回転する頭脳と、それに協力する妻の行動力が見どころです。
作者の卓越したストーリーテリング能力により、半グレ達との丁々発止のやり取りは非常にスリリングに描かれ、質の高いミステリーを読んでいるような感覚を味わえます。また、脇役の登場人物たちにもスポットライトが当たり、独白を通して感情移入させられるものの、あっという間に退場させられるため、読者は作者の手のひらで転がされているようなワクワク感を覚えます。
死体処理の方法など、現実離れしている部分もありますが、適切なタイミングで挿入される解説コマによって説得力が増しています。娘の成長や、歌仙さんの過去の謎など、先が気になる展開も多く、一気に読み進められる作品です。
攻殻機動隊 (士郎正宗)
「攻殻機動隊」は、1989年に連載が始まった士郎正宗の SF 漫画の金字塔です。21世紀の超高度情報化社会を舞台に、電脳化やサイボーグ技術が発展した世界で、犯罪に対抗すべく結成された特殊部隊「攻殻機動隊」の活動を描いています。緻密な物語構成と卓越した画力、そして膨大な情報量で、約30年前の漫画とは思えないクオリティを誇ります。インターネットもろくにない時代に先んじた描写が秀逸で、現実がフィクションを追い越した感さえ感じられます。本作は多くの SF 漫画や映画、アニメに影響を与えた金字塔的存在であり、古典として読んでおくのもおすすめです。ただし、2巻と1.5巻はさらに人を選ぶ内容なので、入門編としては1巻が最も読みやすいかもしれません。
工業哀歌バレーボーイズ (村田ひろゆき)
「工業哀歌バレーボーイズ」は、一見するとスポーツ漫画のようですが、実はお笑い要素満載の青春コメディ漫画です。不良少年たちがバレーボールに打ち込むスポ根ものではなく、ちょっと悪い学生たちが女の子にモテるために奮闘する、ばかばかしくも面白いストーリーが展開されます。
当時の読者にとって、主人公たちのような学生像はすでに時代遅れな感じがしましたが、そのレトロ感がかえって笑いを誘います。男子校の工業高校という設定も、彼らの恋愛事情に一層の困難をもたらし、コメディ性を高めています。
週刊ヤングマガジンで18年もの長期連載を誇った本作は、発行部数100万部以上を記録するほどの人気を博しました。学生時代に皆で話題にしていたという点からも、当時の読者の共感を呼ぶ作品だったことがうかがえます。
油まみれの作業服にパンチパーマが妙に似合う主人公たちが、女の子の香りに弱いながらも、一生懸命モテようと奮闘する姿は、思わず応援したくなります。バレーボールの描写はごく初期のみで、中盤以降はほとんど出てきませんが、それでも彼らの青春は全力で輝いています。
アンダーニンジャ (花沢健吾)
「アンダーニンジャ」は、一言で言うなら「シュールギャグ漫画」でしょう。日常と非日常の境界線が曖昧な世界観の中で、ニンジャたちが暗躍する様子が描かれています。主人公の雲隠九郎は、普段は無気力な様子ですが、いざニンジャとしての能力を発揮する時には、そのギャップがかっこよく描写されます。
花沢先生の作品は、以前は登場人物たちの感情が豊かに描かれていましたが、最近は淡白な感じになっていました。しかし、「アンダーニンジャ」では、その淡白さや捉え所のなさが作品の魅力となっています。
ストーリーの展開は、今何が起きているのかよくわからないまま進行していきますが、その独特の間やテンポが面白さを生み出しています。先の展開が気になるような作品ではありませんが、「なんか面白い」という空気感が魅力的です。
ギャグ、日常、バトル、ニンジャが混ざり合った独特の世界観を楽しみたい方におすすめの作品です。
監獄学園 (平本アキラ)
「監獄学園」は、一見下品な要素満載のギャグ漫画に見えますが、実は男子生徒たちの友情や心理描写にも力が入っており、単なるお下劣コメディに留まらない奥深さを持っています。
女子1016名に対し男子はわずか5名という極端な環境設定の中で、彼らが巻き起こす騒動は、シュールでありながらも妙にリアリティがあり、読者を引き込んでいきます。
特に主人公・キヨシの恋心や葛藤、仲間との絆は、下品なギャグの合間にしっかりと描かれており、読後に爽やかな余韻を残してくれます。
また、独特のタッチで描かれるキャラクターたちの表情は、コミカルでいてどこか生々しく、作品世界に深みを与えています。
一見、女性向けではない作品ですが、男の友情や青春の悩みを笑いに昇華した、抱腹絶倒の傑作ギャグ漫画だと言えるでしょう。ぜひ一度手に取ってみてください。
ゴリラーマン (ハロルド作石)
「ゴリラーマン」は、一見するとただの不良漫画に見えるかもしれませんが、実は高校生の心の機微を巧みに描いた作品です。主人公の池戸定治は、無口で不器用ながらも、仲間たちとの絆を大切にする姿が印象的です。また、ハロルド作石先生の絶妙なジョークのセンスが随所に散りばめられており、読んでいて思わず吹き出してしまうこと間違いなしです。そして、何と言っても、ゴリラーマンの圧倒的な強さは見逃せません。一見不良漫画に見えて、実は笑いあり、友情あり、バトルありの傑作コメディー漫画です。高校生活の日常を描きながらも、読者を飽きさせない展開が魅力的な作品だと思います。