軍事・戦記

Kindle Unlimitedで読めるミリタリー漫画10選

Kindle Unlimited(月額980円で漫画・書籍・雑誌が読み放題)は、実はミリタリー漫画のラインナップがかなり充実しています。傭兵戦闘機モノから戦国合戦、太平洋戦争の特攻隊、ノンフィクションベースの戦記まで、月額の枠内で気になったものを片っ端から試せる環境は、この手の重い題材と相性がいい。私も年間200冊のうち、ミリタリー・戦記モノは30冊前後をKindle Unlimited経由で読んでいます。

このページでは、いわゆる王道(沈黙の艦隊/ジパング/HELLSING/ヨルムンガンドなど)ではなく、執筆時点でKindle Unlimited対象になっていて、かつ「読む価値のある」ミリタリー・戦記漫画8作を紹介します。傭兵、特攻、架空戦記、ノンフィクション戦場ルポまで、視点の異なる作品を集めました。※Kindle Unlimitedの対象作品は月に1〜3回入れ替わります。読む前に各作品ページで対象になっているか確認してください。

この記事の選定基準

紹介する8作は、私が独自に採点している5軸スコア(各5点満点)で評価しています。

  • — 画力・魅力・記号性のバランス
  • 物語 — 構成の巧妙さ、着地の説得力
  • キャラ — 印象に残る度合い、記号化されすぎていないか
  • 中毒性 — 「次巻すぐ読みたい」度
  • 読後感 — 読み終えたあと、心に残った時間の長さ

スコアの詳細は著者ページにまとめています。

1. エリア88(新谷かおる)

物語 キャラ 中毒性 読後感
★★★★★ ★★★★★ ★★★★★ ★★★★★ ★★★★★

民間航空パイロットを目指していた風間真が、親友に騙されて中東の架空国家アスランの傭兵部隊「エリア88」に売り飛ばされる、というオープニングでもう掴まれます。契約解除には150万ドルか、3年生き延びるかの二択。撃墜数×報奨金で借金を返しながら戦闘機に乗り続ける、傭兵戦闘機パイロット漫画の金字塔です。全23巻、完結済み。

私が初めて読んだのは中学3年、書店の棚で1〜3巻を大人買いした夜でした。戦闘機の描写がとにかく緻密で、機種名を意識せず眺めているだけで空気が違うのがわかる。読んでいて痺れたのは、味方部隊の隊長ミッキーが敗戦の重みを一切ヒロイックに描かず、酒場でぼやきながら次の出撃に向かうシーン。40年前の作品ですが、今読み返してもキャラの人間くささが古びていません。傭兵という職業の光と影を、こんなに冷静に見つめた漫画はほかに知りません。


エリア88【合本版】 1 (マンガの金字塔)

新谷 かおる, Amazon Services International LLC

2. Cat Shit One(小林源文)

物語 キャラ 中毒性 読後感
★★★★★ ★★★★★ ★★★★☆ ★★★★★ ★★★★★

ベトナム戦争を舞台に、米陸軍のLRRP(長距離偵察部隊)を「ウサギ=米兵、ネコ=ベトコン、豚=ロシア人、犬=オーストラリア軍」といった動物擬人化で描くという、一見ふざけた設定の戦記漫画。ところがページを開くと空気が一変します。作者の小林源文は日本の戦車・軍装描写の第一人者で、装備・銃器・戦術の緻密さは実写以上と言われるほど。

私が舌を巻いたのは、擬人化なのに戦闘描写の緊迫感が一切減らないこと。1コマ目のライフルスコープの描き込みだけで、この作者が本気だとわかる。人物ではなく動物なのに、味方が倒れたときの喪失感がしっかり残ります。ベトナム戦争を扱った漫画は多いですが、当事者ではない日本人がここまで真摯に「戦場の労働」を描いた例は珍しい。初読の夜、Wikipediaでベトナム戦争の年表を追いかけ直したのを覚えています。


Cat Shit One VOL.1 (Web comics)

小林 源文, Amazon Services International LLC

3. 特攻の島(佐藤秀峰)

物語 キャラ 中毒性 読後感
★★★★★ ★★★★★ ★★★★★ ★★★★☆ ★★★★★

海猿・ブラックジャックによろしくの佐藤秀峰が、太平洋戦争末期の人間魚雷「回天」の搭乗員を描いた作品。主人公・渡辺裕三は海軍兵学校を出て、ある日「新兵器」の搭乗員として山口県大津島の基地に送られます。そこで待っていたのは、生きて戻る前提のない特攻兵器でした。全9巻、完結済み。

特攻を美化しない、そして単純な反戦にも寄せない、その狭いラインを佐藤秀峰は最後まで歩き切ります。私が最も長く手が止まったのは、5巻の同僚が出撃前夜に故郷への手紙を書くシーン。何を書き残すか迷い、結局「元気です」と一行だけ書き終える。この抑制が、どんな叫びよりも重い。読み終えたあと、大津島の写真をネットで探して1時間眺めていました。戦記漫画で「読んで良かった」と言い切れる稀有な一本です。


特攻の島 完全版1

佐藤秀峰, Amazon Services International LLC

4. 皇国の守護者(漫画・伊藤悠/原作・佐藤大輔)

物語 キャラ 中毒性 読後感
★★★★★ ★★★★★ ★★★★★ ★★★★★ ★★★★★

架空の帝国と皇国の戦いを、圧倒的不利な戦況下での撤退戦から描く架空戦記。主人公・新城直衛は皇国軍の中尉で、10倍以上の兵力差を相手に「退きながら勝つ」ための戦術を組み立てていきます。全5巻で連載打ち切りとなった作品ですが、この5巻の密度が異常です。

架空戦記なのに戦術描写の説得力が桁違いで、「撤退戦をここまで面白く描ける漫画があるのか」と唸った作品です。私が繰り返し読み返しているのは、3巻の駒鳥砦攻防戦。数で押されながら地形と時間を武器に敵を削っていく描写が、まるで囲碁の名局を眺めているような気持ちよさがあります。原作小説も未完のまま著者が亡くなってしまい、続きが読めない痛みも含めて記憶に残る作品。読後、戦記系の小説を10冊まとめ買いした夜がありました。


皇国の守護者1 - 反逆の戦場 (中公文庫)

佐藤大輔, Amazon Services International LLC

5. 群青戦記(笠原真樹)

物語 キャラ 中毒性 読後感
★★★★☆ ★★★★★ ★★★★☆ ★★★★★ ★★★★☆

現代の私立高校が、校舎ごと戦国時代にタイムスリップするというシンプルな設定。生徒たちは剣道部、弓道部、水泳部、陸上部といった部活動の技能を武器に、織田信長・徳川家康・武田信玄らが群雄割拠する時代を生き抜こうとします。全17巻、完結済み。

タイムスリップ×戦国という手垢のついた素材を、部活の実技という縦軸で刺し直したのが上手い。私は柔道部が刀を持たない格闘戦で戦場を切り抜けるシーンに一番痺れました。部活で鍛えた技能が、実戦で「本物の戦い」と衝突したときにどこまで通用するか、あるいはどこで折れるか。この「近代スポーツ vs 戦国武力」の描写がとにかく丁寧で、単純な「主人公無双」に絶対にならないのが良い。夜通しで一気読みしてしまった数少ない現代漫画です。

6. ドリフターズ(平野耕太)

物語 キャラ 中毒性 読後感
★★★★★ ★★★★★ ★★★★★ ★★★★★ ★★★★☆

関ヶ原で敗死しかけた島津豊久が、扉を開けたら異世界に飛ばされていた。そこには織田信長、那須与一、ハンニバル、スキピオといった歴史上の武人たちが「漂流物(ドリフターズ)」として集められており、亜人と魔王軍から人類の残党を守る戦争が始まっている──というHELLSINGの平野耕太による新シリーズ。連載中。

HELLSINGで完璧な戦闘描写を確立した平野耕太が、次に選んだのが「歴史上の武人たちの共闘」というテーマ。私が読んでいて頬が緩むのは、信長が現代兵器レベルの戦術を異世界の中世軍隊に持ち込んで無双するシーンです。史実の逸話がふんだんに引かれるので、読み終えたあと戦国武将のWikipediaを渡り歩く時間がしっかり生まれる。連載ペースが遅いのが玉に瑕ですが、1巻ずつ長く反芻できる作品なので、Kindle Unlimitedで既刊分を一気に追いつくには最高のタイミングです。

7. ゴルゴ13(さいとう・たかを)

物語 キャラ 中毒性 読後感
★★★★☆ ★★★★★ ★★★★★ ★★★★☆ ★★★★☆

説明不要のスナイパー漫画。1968年の連載開始から2021年の作者死去後も続く、ギネス記録の長期連載作品です。国際政治・軍事の裏舞台を舞台に、超一流のスナイパーであるデューク東郷が依頼を淡々とこなしていく1話完結型。Kindle Unlimitedでは特定巻・特集号が随時読み放題対象に入ります。

ゴルゴ13の凄みは、1話ごとに現実の国際情勢や兵器・軍事技術をここまで深く調べ上げているのか、と毎回驚かされる編集姿勢にあります。私が特に好きな回は、CIAが介入する中南米麻薬カルテルの話。当時の実際の政治状況を踏まえた背景設計が、フィクションの上に一段リアリティを乗せています。長編ではなく1話単位で完結するので、通勤時間で1話ずつ読んでいく体験と極めて相性がいい。読み放題対象を見つけたら片っ端から拾い読みするのが、私の使い方です。

8. 戦争は女の顔をしていない(漫画・小梅けいと/原作・スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ)

物語 キャラ 中毒性 読後感
★★★★☆ ★★★★★ ★★★★★ ★★★★☆ ★★★★★

ノーベル文学賞作家アレクシエーヴィチが、第二次大戦にソ連兵として従軍した女性たち500人以上に聞き書きしたルポルタージュを漫画化した作品。狙撃兵、衛生兵、戦車搭乗員、洗濯部隊など、後方から前線まで女性が背負った戦争の断片が、1話1人の証言スタイルで紡がれます。連載中。

戦記漫画のほとんどは男性の視点で書かれていますが、この作品は徹底的に女性兵士の一人称です。私が息を呑んだのは、若い狙撃兵が「初めて敵を撃ち殺した夜、泣きながら教官のもとに走った」と語る回。戦場での葛藤を「英雄的な話」に丸め込まず、生活者の言葉で残す姿勢が、他の戦記モノには絶対にない読後感を生みます。原作の翻訳もKindleにあるので、漫画で入って原作に進むと、二重に沁みてきます。私が「読み終えて眠れなくなった作品」の候補に、最近ずっと入っている一本です。


戦争は女の顔をしていない 1 (単行本コミックス)

小梅 けいと, ,, スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ

Kindle Unlimitedを試す3つの理由

ここまで8作紹介してきましたが、ミリタリー・戦記漫画をKindle Unlimitedで読む意義を、私の実感で3つ挙げておきます。

1: 単巻課金では踏み切れない古典に手を伸ばせる
エリア88やCat Shit Oneのような80〜90年代の作品は、単行本が絶版で紙で買うと高額になりがち。読み放題枠なら「試しに1巻」の心理的ハードルが消えます。私はこの制度に切り替えてから、古い作品を読む本数が3倍以上に増えました。

2: 長編を「読み始める勇気」が出る
ゴルゴ13や皇国の守護者のように、既刊数が多い作品や難易度の高い作品は、購入だと最初の1巻で挫折すると損した気になる。読み放題ならそれがない。合わなければ次に行けばいい、という気軽さが、結果として名作との出会いを増やしてくれます。

3: 「今月のラインナップ」を追いかける習慣が読書量を底上げする
Kindle Unlimitedは月に1〜3回、対象作品が入れ替わります。「今月はミリタリー枠が厚いな」と気づいて棚を巡回する習慣がつくと、意外な傑作に出会えます。私が続・戦争は女の顔をしていないを読んだのも、この巡回で見つけた偶然でした。


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