漫画まとめ

1巻で完結する面白いオススメマンガ30選

回游の森 (灰原 薬)

回游の森の概要

灰原薬先生の短編集『回游の森』は、普通の人々が隠し持つ「秘密」をテーマにした、背徳感あふれる一冊です。各話に登場するキャラクターたちは、「隠された過去」や「誰にも言えない秘密」を抱えており、その後ろ暗い部分を覗き見るような、禁断の味わいが読者を惹きつけます。少女愛を秘めた男、愛した男に復讐をたくらむ女、蛇しか愛せない青年、親友に恋した少女など、様々な「秘密」を持った登場人物たちが織りなす物語は、読む者に極上の"疚しさ"を与えてくれるでしょう。また、各話のラストに次のエピソードのキャラクターが顔を見せるという構成も面白く、「秘密」を抱えた人たちの物語が連鎖していることを感じさせます。『回游の森』は、他人の秘密を覗き見るような背徳的な体験を味わえる、ユニークで魅力的な作品です。

ブラッドハーレーの馬車 (沙村 広明)

ブラッドハーレーの馬車の概要

『ブラッドハーレーの馬車』は、人間の罪深さを少女達の悲劇を通して描いた、胸が締め付けられるようなミステリー・サスペンス作品です。

孤児院で暮らす少女達にとって、ブラッドハーレー聖公女歌劇団の一員になることは、貧しい生活から抜け出せる唯一の希望でした。しかし、その希望は残酷な現実によって打ち砕かれます。少女達が向かった先は、非人道的な国家プログラムの犠牲となる地獄だったのです。

作品では、少女達の絶望と、彼女達を取り巻く大人達の醜いエゴが赤裸々に描かれます。一方で、非人道的な行為に良心の呵責を感じる登場人物の姿もあり、人間の善悪両面が浮き彫りにされていきます。

淡々とした筆致で描かれるからこそ、読者の心に深く突き刺さる衝撃があります。少女達の無垢な心が踏みにじられ、壊されていく様子は、読んでいてとても辛いものがありますが、それと同時に、人間の業の深さについて考えさせられます。

『無限の住人』の沙村広明先生による本作は、決して後味の良いものではありませんが、人間性の闇に光を当て、読者の心に強いメッセージを残す秀作です。もし、ミステリーが好きな方で、人間ドラマに興味がある方にはおすすめしたい一冊です。

水上悟志短編集「放浪世界」 (水上悟志)

水上悟志短編集「放浪世界」の概要

水上悟志先生の4作目の短編集「放浪世界」は、SF・ファンタジー・ギャグ・ヒューマンドラマと多彩なジャンルを網羅した、読み応え抜群の一冊です。表題作「虚無をゆく」は74ページの大ボリュームで、虚無から現れた巨大な怪魚と戦う宇宙船を舞台にした壮大なSF中編。他にも、双子の青春劇や小さなドワーフを題材にした作品など、日常への新しい視点を提供してくれる5編を収録。大人が読んでこそ心に響く「今更ファンタジー」や、続編が期待される「エニグマバイキング」など、どの作品も魅力的なキャラクターと没入感のある世界観が印象的。連載の合間に描かれたとは思えない完成度の高さは、水上先生の真骨頂です。ちょっとした移動時間や気分転換にぴったりな、満足感たっぷりの短編集をぜひお楽しみください。

ひきだしにテラリウム (九井諒子)

ひきだしにテラリウムの概要

「ひきだしにテラリウム」は、SF、ファンタジー、ギャグ、ヒューマンドラマなど多彩なジャンルを網羅した、九井諒子先生の短編集です。わずか2ページで完結する物語の数々は、豊かな感受性と観察力、想像力が詰め込まれており、緻密な絵柄とともに読者を魅了します。「未来の少女漫画」と称されるシュール系SFや、ザ・ファンタジーな作品がイマジネーションを刺激する一方、誰もが経験したことのあるリアルな物語もあり、幅広い読者層に楽しんでいただけます。また、『ダンジョン飯』ファンにも通じる要素が散りばめられており、九井先生の作品世界を存分に堪能できる一冊です。全33編の短編が織りなす、笑顔と涙、驚きと共感に満ちたワンダーランドを、ぜひご体験ください。

式の前日 (穂積)

式の前日の概要

『式の前日』は、人間関係の機微を丁寧に描写した珠玉の短編集です。結婚式を翌日に控えた男女の何気ない日常を描いた表題作では、会話の端々から2人の関係性が浮かび上がります。ラストの意外な展開は読者の心を揺さぶり、もう一度読み返したくなること間違いなしです。

他の収録作品も、親子や見知らぬ者同士の交流など、日常的な題材から深い感動を引き出しています。穂積先生の観察眼の鋭さと、人間ドラマを巧みに描く手腕が存分に発揮された1冊です。ヒューマンドラマとラブストーリーが絶妙に織り交ぜられた本作は、人と人との繋がりの大切さを教えてくれます。短編漫画の面白さを味わいたい方には是非おすすめしたい作品です。

忘れられない (谷川史子)

忘れられないの概要

谷川史子先生の新しい短編集「忘れられない」は、過去の恋に未練を残しながらも前に進もうとする女性たちの物語です。表題作では、母と娘それぞれの忘れられない恋が描かれ、相手に心を残したまま年を重ねた恋の終わらせ方が胸を打ちます。他の収録作品でも、純愛に臆病になる若手編集者や、高校時代の同級生への恋心に気づく女性など、優しくて切ない恋物語が詰まっています。

結婚相手や恋人だけを愛することができたら悩むことはありませんが、過去を後悔しているからこそ思い悩むのが恋です。本作は、そんな恋の切なさを丁寧に描き出しています。甘いだけではない、リアルな恋愛模様に共感できるでしょう。

谷川先生の30年のキャリアが生み出す、深く繊細な人物描写と心理描写にも注目です。登場人物たちの心の機微が巧みに表現され、読者を物語世界に引き込みます。恋愛に悩む全ての人に、ぜひ手に取ってもらいたい一冊です。

盆の国 (スケラッコ)

盆の国の概要

「盆の国」は、日本の夏の風物詩であるお盆を舞台に、生者と死者の境界が曖昧になる不思議な世界を描いた作品です。主人公の秋は、ご先祖様の姿が見える特別な力を持っており、お盆が永遠に続く世界に迷い込んでしまいます。そこで出会った夏夫とともに、この不思議な現象の謎を解き明かすために冒険を始めるのです。

作品の魅力は、盆踊りや花火、夕立といった日本の夏ならではの情景が、ノスタルジックかつ幻想的に描かれている点にあります。また、生者と死者の世界が交錯するお盆ならではの独特の雰囲気も見事に表現されています。

「盆の国」は、親しい人との別れや再会、そして永遠に続く夏への憧れといった、誰もが抱く普遍的な感情を巧みに捉えた作品です。SF・ファンタジーの要素を取り入れつつも、日本の伝統行事であるお盆を題材にすることで、読む人の心に深く響く物語となっています。

もしあなたが、日本の夏の風景や文化に興味があり、ちょっぴり切ない気持ちになれる作品を探しているなら、「盆の国」はぜひおすすめしたい一冊です。この不思議な世界に浸れば、夏の終わりに感じる名残惜しさと、大切な人との絆を再確認できるでしょう。

旅する缶コーヒー (マキヒロチ)

旅する缶コーヒーの概要

『旅する缶コーヒー』は、缶コーヒーをモチーフに紡がれる11の物語が詰まった、マキヒロチ先生の短編集です。舞台は尾道から東京、さらにはロンドンまで全国各地に及び、それぞれの土地の風景が鮮やかに描かれています。

物語の主人公たちは、缶コーヒーを通して過去の思い出や人との繋がりを振り返ります。元グラビアアイドルが初恋の地で缶コーヒーを飲み、父と子が缶コーヒーを介して再会を果たすなど、缶コーヒーが人生の様々な場面で小道具として活躍します。

マキヒロチ先生の巧みなストーリーテリングにより、缶コーヒーを中心に繋がれた人と人との思いが、爽やかに、そして味わい深く描かれています。読み進めるほどに引き込まれ、読後には心地よい余韻が残る作品です。

缶コーヒーという身近な存在を通して、人生の機微や人との絆を描いた本作は、コーヒー好きはもちろん、誰もが共感できる普遍的なテーマを持った作品です。ぜひ、手に取ってみてください。

珈琲時間 (豊田徹也)

珈琲時間の概要

豊田徹也先生の漫画「珈琲時間」は、コーヒーを介して繋がり合う人と人の物語を描いた珠玉の短編集です。谷口ジロー先生に絶賛されてデビューを果たした豊田先生ならではの、ウィットに富んだ人物描写やセリフがないコマにも溢れる深い叙情が魅力です。

本作には、チェロ奏者の女性と怪しげなイタリア人男性の出会いを描いた「Whatever I want」をはじめ、ちょっとませた男の子が探偵に依頼する話や、人生に悩んだ若い女性が叔母との会話で心を癒される話など、個性豊かな17編の短編が収録されています。どの作品も登場人物の機微に触れており、巧みなオチの付け方も印象的です。

コーヒーを飲みながらの会話やシーンを通して、人生に豊かな時間をもたらすコーヒーの魅力が存分に描かれています。裏社会の男達が拳銃を向け合う緊迫した場面でコーヒーを飲み交わすなど、様々な状況下でのコーヒーの描写は、読者を飽きさせません。

「珈琲時間」は、コーヒーがあるだけで世界がこんなにも美しく見えることを教えてくれる、芳醇な短編集です。ヒューマンドラマというジャンルにふさわしい、人間味あふれる作品を堪能できるでしょう。

休日ジャンクション (真造圭伍)

休日ジャンクションの概要

真造圭伍先生の短編集『休日ジャンクション』は、ちょっぴり切なくてちょっぴりエロティックな7つの物語が詰まった、バラエティ豊かな一冊です。学生時代の自由な時間が終わってしまったことを感じさせる「休日」、ゴジラが重要キャラとして登場する「ゴジラカップル」、小学5年生の美少女と会社員の青年の怪しいデートを描く「美少女なんて大嫌い」など、ドキリとさせられる展開が魅力的。中でも衝撃的なのは、飼い主を失った家猫ぶんちゃんの生きざまを描いた「家猫ぶんちゃんの一年」。リアルな猫の可愛さとシビアな展開が、猫好きだけでなく生き物を飼っている人の涙腺を刺激します。さらに、映画『森山中教習所』の番外編「つりぼり松田さん」も収録。真造ワールドの深さとユーモアを、ぜひこの機会に堪能してみてください。

虫と歌 市川春子作品集 (市川春子)

虫と歌 市川春子作品集の概要

市川春子先生の初期短編集『虫と歌』は、日常の中に潜む神秘的なファンタジーの要素に魅了される作品集です。現代人の普通の暮らしを描きながらも、非日常的な会話や出来事が自然に差し込まれ、読者を驚かせます。表題作の「虫と歌」では、虫を設計する兄と模型作りを手伝う弟、そして意外な訪問者が登場し、物語は謎のベールを剥がしていきます。そのラストの切なさは、なかなか体験できないものでしょう。他にも、自分の指から生まれた妹への感情を綴る『星の恋人』、肩を壊した高校球児と"ヒナ"との交流を描く『日下兄妹』、飛行機事故で遭難した2人の交流を描く『ヴァイオライト』など、唯一無二の才能が生み出した珠玉の短編が収録されています。市川春子先生の持つ神秘的な魅力に触れることができる、おすすめの一冊です。

惑星9の休日 (町田洋)

惑星の9の休日の概要

『惑星の9の休日』は、町田洋先生によるデビュー作で、地球に似た環境を持つ「惑星9(ナイン)」を舞台にした8つのショートストーリーが織りなすSF・ヒューマンドラマです。町田先生は以前、ウェブ漫画『船場センタービルの漫画』で注目を集めましたが、今作ではさらに深みのある物語性と魅力的なキャラクターが展開されます。

この作品集では、作家志望の男と少女の切ない恋や、惑星9での平穏な一日を描いた表題作など、各話が独自の魅力を持ち、読む者をノスタルジックな気分にさせます。SFの要素が巧みに日常生活に織り交ぜられており、星新一のショートショートを思わせるようなストーリーテリングですが、星の作品よりも温かみや愛嬌を感じさせる内容となっています。

また、シンプルながらも独特な深みを持つ絵柄は、各コマがポストカードのような美しさを持ち、SFというジャンルの枠を越えて心地よい読書体験を提供します。穏やかでありながらもSFとしての奥深さを保ちつつ、町田先生特有のアンバランスな世界観がクセになることでしょう。

SFが好きな方はもちろん、ヒューマンドラマに心を動かされる方にもおすすめの一冊です。

透明人間の恋 (安藤ゆき)

透明人間の恋の概要

安藤ゆき先生の短編集「透明人間の恋」は、ちょっとしたきっかけで人生が大きく変わるというテーマを軸に、日常に潜むドラマティックな瞬間を鮮やかに描き出しています。表題作「透明人間の恋」では、存在感のなかった女の子が、衆人環視の中での告白とそれに対する衝撃的な返答をきっかけに、自分の姿と周りの評価に気づき、美しく変身するストーリーが展開されます。他の短編でも、些細な出来事が登場人物の人生を大きく変えていく様子が描かれており、読者は自分自身の人生を振り返るきっかけにもなるでしょう。特に「drops.」は、「雨」をモチーフに時と場所を越えて人々が繋がる様子を巧みに描いた技巧的な作品で、物語の構成の妙を味わえます。この短編集は、「このマンガがすごい! 2014年オンナ編」にランクインし、安藤先生の才能が広く注目されるきっかけとなった作品です。人生のターニングポイントについて考えさせられる、示唆に富んだ作品集であり、ぜひ多くの人に手に取ってもらいたい一冊です。

塀の中の美容室 (小日向まるこ,桜井美奈)

塀の中の美容室の概要

『塀の中の美容室』は、女子刑務所内にある一般客も通う美容室を舞台に、受刑者でありながら美容師として働く小松原葉留と、様々な事情を抱えて美容室を訪れる客たちとの交流を描いたヒューマンドラマです。葉留と客たちは、美容室という特別な空間で心を通わせ、お互いに影響を与え合いながら、新たな一歩を踏み出していきます。

葉留がかける言葉は、読者の心にも深く響くでしょう。「とりあえずひとつだけ決めて頑張ってみたら、他のこともまた連鎖していい方向に進むような…そんな気がします。」という言葉は、人生のつまずきを経験した多くの人に、立ち上がる勇気を与えてくれます。

本作は、第24回文化庁メディア芸術祭マンガ部門で優秀賞を受賞するなど、その質の高さが評価されています。作者の小日向まるこ先生の繊細な筆致と、登場人物たちの心の機微を丁寧に描写する力は、読者の心を温かく包み込みます。

人生の困難に直面した時、この物語を思い出してください。きっと、新しい一歩を踏み出す勇気をもらえるはずです。『塀の中の美容室』は、心に寄り添いながら、再生と成長を描いた感動的な物語です。

ヨルとネル (施川ユウキ)

ヨルとネルの概要

施川ユウキ先生の『ヨルとネル』は、身長10センチほどのこびとになってしまった2人の少年の逃避行を描いた切ないSF・ヒューマンドラマです。研究所から逃げ出したヨルとネルは、夜の街や留守中の家、草むらの中を駆け抜けながら、南の海を目指します。食べ物を探したり、洗面台で風呂に入ったりと、小さな体で必死に生きる姿に胸が締め付けられます。クールなヨルの哲学的なセリフとネルのツッコミが絶妙な掛け合いを生み出す一方で、こびと狩りに追われる2人の絶望感も垣間見えます。4コマ漫画でありながら一貫したストーリーで、祈りに似た気持ちで読み進められる作品です。フランスの漫画「かわいい闇」に刺激を受けて生まれた本作は、施川先生独特のセンスが光る1巻完結の傑作です。

神様がうそをつく。 (尾崎かおり)

神様がうそをつく。の概要

「神様がうそをつく。」は、純真無垢な少年と問題を抱えた少女の切ないひと夏の物語です。転校生のなつるは、クラスメイトの理生の秘密を知り、大人の身勝手な行動に翻弄されながらも、彼女を守ろうと奮闘します。子供だけでは解決できない現実に直面しながらも、2人は手を取り合って、自分たちなりに精一杯生きようとします。

作品は、子供のピュアな心情を丁寧に描写する一方で、大人の助けを借りられない子供たちの危うさや未熟さも忠実に表現しています。そんな中で、なつると母親の絆は読者に希望を与えてくれます。問題行動を起こすなつるを信じ続ける母の姿は、読む者の心を揺さぶります。

夕立、お祭り、猫との出会いなど、懐かしくも切ない夏の情景が随所に散りばめられ、物語に深みを与えています。そして、子供だけの冒険の終わりに、なつると理生の未来に明るい兆しを感じさせる結末は、読後感を心地よいものにしてくれます。子供時代の純真な思い出と、大人になることの儚さや切なさを同時に味わえる、珠玉の作品です。

GOGOモンスター (松本大洋)

GOGOモンスターの概要

松本大洋先生の大作『GOGOモンスター』は、子供だけが見える不思議な世界を描いたファンタジー漫画です。主人公の立花雪は、学校に存在する目に見えない何かを感じ、周囲から浮いた存在でした。転校生の鈴木誠は、雪の内面世界に惹きつけられ、二人は抽象的で捉えどころのない会話を繰り返します。松本先生独特のアーティスティックな描線で表現された、現実に寄り添うもう一つの世界に読者は誘われます。子供には一体何が見えているのか、それを考えるのではなく感じることができる作品です。完成に2年を要した渾身の450ページは、コミック界を震撼させ、2001年に第30回日本漫画家協会賞特別賞を受賞しました。大人になって失ってしまった、子供だけが感じられる不思議な世界を体験できる、ファンタジー漫画の傑作です。

ちーちゃんはちょっと足りない (阿部共実)

ちーちゃんはちょっと足りないの概要

「ちーちゃんはちょっと足りない」は、多感な女子中学生の心の奥底に潜む複雑な感情を鋭く描き出した作品です。主人公のちーちゃんとナツは、成績、お金、恋人、友達など、何かが常に足りないと感じながら日々を過ごしています。優等生の旭や学級委員に助けられつつも、普通の生活を送る2人ですが、ある日、クラスメイトの藤岡から万引きを持ちかけられます。その出来事をきっかけに、ナツの心の中に潜むひがみや劣等感が徐々に表面化していきます。

作者の阿部共実は、かわいらしい絵柄を用いながらも、貧困やスクールカーストといった子供の世界に潜む問題を真摯に描写しています。読者は、ちーちゃんとナツの心情に共感しつつ、彼女たちが直面する現実の厳しさにヒリヒリとした痛みを感じずにはいられません。この作品は、「このマンガがすごい!2015」オンナ編で第1位を獲得するなど、多くの反響を呼んでおり、思春期の少女たちの内面を深く掘り下げた傑作として高く評価されています。

外天楼 (石黒正数)

外天楼の概要

石黒正数先生の『外天楼』は、一見たわいもないエピソードから始まり、やがて予想外の展開へと導かれていく、巧みなストーリーテリングが魅力のミステリー作品です。舞台となるのは、複雑な構造を持つ集合住宅「外天楼」。そこに住む個性的なキャラクターたちが織りなす、一見日常的な出来事の裏に隠された真実が、次第に明らかになっていきます。

序盤は、エロ本を巡る少年たちのコメディタッチのエピソードや、ロボットが人間に混じって働く近未来SFなど、一見バラバラに見える物語が展開されます。しかし、主人公の姉の登場をきっかけに、それぞれのエピソードが巧妙に繋がっていることに気づかされるのです。

外天楼の住人の過去と、ロボット開発を巡る事件が、全体のストーリーを貫く2つの軸となっています。コメディからシリアスへと自然に変化していく物語の流れと、所々に張り巡らされた伏線が、読者を驚愕のラストへと導いていきます。一度読み終えたら、もう一度最初から読み返したくなること間違いなしの、石黒正数先生ならではの不思議系ミステリーです。

山羊座の友人 (乙一,ミヨカワ将)

山羊座の友人の概要

未来の新聞から始まる、乙一先生の短編を漫画化した青春ミステリー「山羊座の友人」。主人公の高校生・松田ユウヤは、ベランダに運ばれてくる不思議な物の中から、近い将来に起こる殺人事件を報じる新聞の切れ端を見つけます。

事件当日の夜、ユウヤは鈍器を持った同級生・若槻ナオトと遭遇。いじめられていたナオトを見て見ぬふりしていた罪悪感から、ユウヤは彼を匿い、共に逃避行の旅に出ます。

タイトルにある山羊座はナオトの星座であり、「アザゼルのヤギ」がこの作品の重要なモチーフ。ファンタジーの要素を取り入れつつ、巧みな構成で描かれた物語は、意外性がありながらも納得のいくラストを迎えます。

少年二人の逃避行の果てに待つ衝撃の真実と、切ない結末。物語巧者・乙一先生の作品世界を、ミヨカワ将先生の絵で堪能できる一冊です。

スキエンティア (戸田誠二)

スキエンティアの概要

「スキエンティア」は、現代社会に生きる人々の悩みや葛藤を、SFの要素を織り交ぜながら描いた珠玉の短編集です。著者の戸田誠二先生は、人間の心の機微を巧みに捉え、読者の心に深く響くストーリーを紡ぎ出す短編の名手として知られています。

本作の舞台となるのは、「科学」と「知識」の女神スキエンティアの像が見下ろす街。その象徴的な存在が物語に深みを与えています。各エピソードでは、自殺願望を抱える女性、愛を求める女子高生、母親を亡くした娘など、現代社会の闇に苦しむ人々が登場します。彼らは「禁断の科学」に救いを求めますが、その先に待つのは果たして幸福なのでしょうか。

SF設定を巧みに取り入れつつ、リアリティを失わない人物描写が本作の魅力です。特に、2008年に「世にも奇妙な物語」でドラマ化された「ボディレンタル」は必読。自殺願望のある女性と、最期に生身の体で働きたいと願う老婆の心の交流が、読む者の胸を打ちます。

現実では体験しえない不思議な出来事を通して、登場人物たちは人生について深く思索します。そして、彼らの上で静かに佇むスキエンティアの姿が、物語に感動的なフィナーレを与えているのです。心揺さぶられる読後感を味わいたい方に、ぜひおすすめしたい一冊です。

邪眼は月輪に飛ぶ (藤田和日郎)

邪眼は月輪に飛ぶの概要

藤田和日郎先生の新作「邪眼は月輪に飛ぶ」は、これまでの作風を凝縮した圧倒的な世界観が1巻で堪能できる作品です。死をもたらす邪眼を持つフクロウ〈ミネルヴァ〉との戦いを通して、登場人物たちの過去や思いが巧みに描かれ、読む者を引き込む熱い人間ドラマが展開されます。

特に印象的なのは、ミネルヴァの邪眼や鵜平の存在感など、キャラクターの強烈な個性と、それぞれの背負う運命の重さです。また、敵対するミネルヴァの生き物としての切なさにまで踏み込んでいる点は、藤田先生ならではの優しさを感じさせます。

人類の存亡をかけた壮大なスペクタクルバトルでありながら、登場人物一人一人の物語に丁寧に向き合う姿勢は、まさに藤田作品の真骨頂と言えるでしょう。ダークファンタジー大長編の新たな金字塔となる予感を感じさせる一作です。

こども・おとな (福島鉄平)

こども・おとなの概要

福島鉄平先生の最新単行本『こども・おとな』は、誰もが経験したような子供時代の1ページを繊細に描いた、ノスタルジックで温かな雰囲気に溢れた作品です。主人公のサトルは、社会の「当たり前」や人との接し方がわからない子供。しかし、自分の振る舞いがずれていたことに気づくと、素直に行いを正していきます。

先生、兄、父、友達、祖父といった周囲の人たちとの触れ合いを通して、サトルは少しずつ社会性を身につけていきます。そして、最後に描かれる母との話は、思わず涙がこぼれてしまう、切なくて優しいエピソードです。

あの時、君のそばにいた人を。君を見つめていた人を。どれだけ、思い出せますか? 懐かしい時代、ありふれた田舎の町の少年と彼を見守る大人たちの物語。不安と安堵の狭間を描く憧憬ヒューマンストーリーです。

福島先生の柔らかい描線が、読者自身の子供時代を思い出させてくれます。懐かしさと切なさをしみじみ感じられる1冊を、ぜひ手に取ってみてください。

なんてことないふつうの夜に (嶽まいこ)

なんてことないふつうの夜にの概要

「なんてことないふつうの夜に」は、一見普通の夜を過ごす人々の、ちょっぴり不思議で可笑しな瞬間を切り取った、SF色の強い日常系ファンタジー短編集です。結婚を控えたクールなOLが深夜に辿る記憶の彼方を描いた〈追憶のネットサーフィン〉や、昼は高校生、夜は世界を救う魔法少女たちのイマドキの悩みを描いた〈魔法少女の現実問題〉、3徹中の修羅場マンガ家の眠気は限界、見えないものが見えてきてしまう〈わたしの睡魔〉など、珠玉の12編を収録。さらに、各話の登場人物たちが織り成す4コマ漫画も描き下ろしで収録されています。恋愛に絡めたエピソードも多く、気軽に楽しく読める作品集です。そして、ラストにはそれまでの登場人物が一堂に会して飲み会をする「おまけ」があり、笑いとともに全編を振り返ることができます。眠れる日にも、眠れぬ日にも、夜のおともにぴったりの一冊です。

さよならガールフレンド (高野雀)

さよならガールフレンドの概要

高野雀先生のデビュー作「さよならガールフレンド」は、田舎の閉塞感に悩む高校生の女の子が、彼氏の浮気相手だった"ビッチ先輩"との出会いを通して、新しい世界を発見していく物語です。主人公のちほは、くだらない人々とつまらない話題に囲まれた日常に嫌気がさしていましたが、自由奔放に生きるりなとの交流を通して、自分を取り巻く環境から抜け出す希望を見出していきます。他の短編でも、田舎に暮らす若者たちの鬱屈とした心情や、恋愛に流されている男女の姿が、リアルに描かれています。しかし、作品全体を通して、重苦しさはなく、ラストには常に希望が用意されているのが魅力です。2015年に発表されたこの作品は、同人誌時代から多くのマンガ読みから絶賛され、商業誌デビューのきっかけとなりました。新鋭作家の登場を予感させる、フレッシュな感性に溢れた一冊です。

友だちの話 (山川あいじ,河原和音)

友だちの話の概要

『友だちの話』は、女子高生の英子ともえの友情を中心に、男女の友情や恋愛を描いた爽やかな青春ストーリーです。性格も外見も正反対の2人ですが、お互いを深く理解し合う強い絆で結ばれています。もえは告白されるたびに「英子を大事にしてくれるなら」と条件を付けていましたが、ついにその条件を受け入れる土田が現れます。

土田との交際が始まり、英子ともえの関係に変化が生じますが、2人の友情は揺るぎないものであることが描かれています。また、土田の親友・鳴神も登場し、男同士の友情や、男子から見た女子の友情なども描かれます。

この作品は、裏表のない友情の大切さ、相手を思いやる気持ちの素晴らしさを教えてくれます。川原和音先生の原作に、山川あいじ先生の繊細な作画が加わり、読む人の心を温かくする1冊です。友情や恋愛に悩む全ての人に、ぜひ手に取ってもらいたい作品です。

ドントクライ、ガール (ヤマシタトモコ)

ドントクライ、ガールの概要

「ドントクライ、ガール」は、常識人の女子高生・たえ子が、親の都合で31歳のイケメン・升田のもとで居候することになり、彼が裸族だったことから始まる、笑いあり、ドキドキありの年の差ラブコメディです。

たえ子の17年間積み上げてきた価値観が崩れる中、升田の変態性と妄想癖にツッコミを入れつつも、彼の優しさに惹かれていく様子が描かれています。さらに、下ネタ好きのパティシエ・陣内や、感情豊かなたえ子のクラスメイトたちが加わり、物語はより賑やかに展開していきます。

策士なたえ子が主導権を握ったところから、怒涛の展開が待っています。常識人とクールを装いつつも、内心ではイケメンの裸族に翻弄される女子高生の姿に、共感せずにはいられません。

泣いていても始まらない、爆笑必至の青春ストーリーを、ぜひお楽しみください!

センチメンタル無反応 真造圭伍短編集 (真造圭伍)

センチメンタル無反応 真造圭伍短編集の概要

『センチメンタル無反応 真造圭伍短編集』は、『ひらやすみ』で知られる真造圭伍先生の2017年から2021年までの作品を集めた短編集です。居酒屋を舞台にした戦争物語や、個性的な家族の再出発を描いたヒューマンドラマ、漫画家の日常を切り取ったエッセイなど、バラエティに富んだ全8編が収録されています。

中でも注目は、先生自身の闘病記「悪性リンパ腫で入院した時のこと」。2020年のコロナ禍での入院生活を通して、日常の尊さや人とのつながりの大切さを再発見する過程が描かれており、『ひらやすみ』の優しい世界観の源流を感じることができます。

本作は、人生の喜びや哀しみ、希望を真摯に見つめ、ユーモアを交えて表現した作品集です。『ひらやすみ』ファンはもちろん、日常を丁寧に切り取った短編マンガを求める読者にもおすすめの一冊です。真造先生の多彩な才能と、生きることへの愛情が詰まった珠玉の短編集を、ぜひ手に取ってみてください。

銀河パトロール ジャコ (鳥山明)

銀河パトロール ジャコの概要

SF、ギャグ、アクションが絶妙に融合した鳥山明先生の短編作品「銀河パトロール ジャコ」。宇宙人のジャコが地球に不時着し、時空工学博士の大盛と出会うところから物語は始まります。

ジャコは、宇宙船の修理のために大盛の家に居候しながら、地球で様々な騒動を巻き起こします。ギニュー特戦隊を彷彿とさせるポーズや、ブラックなセリフなど、鳥山ワールド全開のキャラクター造形が魅力的です。

物語には、勝ち気な少女・タイツも登場。彼女は「ドラゴンボール」との意外な関わりを持つキャラクターで、ファンにはたまらない設定となっています。

終盤には、驚きのゲストキャラクターも登場し、ジャコが地球にやって来た真の目的が明らかに。「ドラゴンボール」ファンなら、ぜひ手に取っておきたい1冊です。

TVアニメ「ドラゴンボール超」にも準レギュラーとして登場しているジャコ。本作を読めば、彼の活躍がさらに面白く感じられるはずです。SF、ギャグ、アクションが好きな方には特におすすめしたい作品です。

春と盆暗 (熊倉献)

春と盆暗の概要

恋に恋する全ての人におすすめしたい、ちょっぴり変わった恋愛ストーリー集です。主人公たちは、いわゆるイケメンや美女ではなく、どこにでもいそうな平凡な人々。でも、彼らの頭の中は普通じゃない! 月面に道路標識を放り投げる女の子、名前が毎回変わるセーラー服女子、世界が早送りに見える男の子など、キャラクターたちのとびきりユニークな感性が、日常を非日常へと変えていきます。彼らの恋の行方は、独特な言葉のやりとりの中で進展していく、予測不能な展開の連続。月刊『アフタヌーン』でデビューした気鋭の作家・熊倉献の初コミックスで、恋愛ドラマの新しい可能性を感じさせてくれる1冊です。

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